もののけ姫は初めて観て以来、定期的に観るほど一番大好きな映画です。
なぜかまた見たくなる、惹かれてしまう映画です。
今よくよく考えると、もののけ姫は大自然の壮大さや自然を支配しようとする人間の儚さなど現代の環境問題や気候変動とも深く繋がりがあり、共感することが多いからかもしれません。
今回はそんな大好きなもののけ姫をアニミズムの観点からどのように自然との共生・共存できるのか読み解きます。
Table of Contents
もののけ姫とは?
1997年にスタジオジブリの長編アニメーション映画作品として、宮崎駿監督が構想16年、制作3年をかけた大作!
時代は遡ること1570年代の室町時代にまでのぼります。(時代特定のヒント:石火矢、浅野公方)
もののけ姫を一言で表すと「自然と文明の対峙」という感じがします。
登場人物をみても、シシガミの森やタタラ場、サン(もののけ姫)とエボシというように自然と文明(人間)が対立している構造になっています。
神秘主義 合理主義
自然 文明
シシ神の森 タタラ場
サン(もののけ姫) エボシ
アニミズム① アニミズムについて
アニミズムとは万物に霊魂が宿っているという考え方です。
アニミズムという言葉はラテン語のアニマ(anima)=霊魂という言葉に由来します。
例えば、もののけ姫では
❶アシタカの暮らしていた村の社(やしろ)では、岩が神聖なものとして崇められている
❷シシ神が聖なる生きものとして登場している
ということがアニミズムとして挙げられます。
アニミズム② 自然崇拝との違い
自然崇拝
❶自然そのものが信仰対象
❷例:山、海、土、太陽、季節、天気、水、火、岩、動物、植物など
自然崇拝とは、自然そのものが信仰の対象であるのに対し、
アニミズムはものに宿っている精霊を信仰対象としている点に違いがあります。
アニミズム③ 日本のアニミズム
実はアニミズムは日本と繋がりが深いのです!
カタカナ表記の名前なので海外から来たものだと感じてしまいますが、アニミズムにある精霊信仰は古くから日本にある信仰です。
八百万の神という言葉があるように、昔から全てのものに魂が宿るという考えがあったことがわかります。
ちなみに、八百万(やおよろず)は”数がたくさんの”という意味です。
日本の宗教や信仰は、神様が1人だけではなく数多くいる印象があることからも万物に神を見いだす多神教の流れがあるのかもしれません。
アニミズム④日本の自然観
豊かな自然に囲まれていた古代日本では(現代でも)台風、地震や洪水などの自然災害が多く、自然=人間の力が及ばないものという認識があったことが精霊信仰(アニミズム)につながったと思われます。
自然は畏れる対象であると同時に、神秘的で美しい側面を兼ね備え、日本人にとっては神と呼ぶにふさわしい存在だったのでしょう。
日本人の在り方は本来とても自然と共生・共存する生き方だったように感じます。
cf. キリスト教の自然は人間が支配すべきものであるという思想もあります(西洋起源)
アニミズム⑤ 身近な日常での関わり
❶ものを投げたら叱られたという経験はありませんか?
小さい頃に、ものを投げて遊んでいて怒られた経験があります。
ものは生きていませんが(もしかしたら生きているかもしれません)、そこに生命を見出し、投げるという行為ものに失礼 というふうに考えられています。
これもものに魂があるかのように考えているからではないでしょうか?
❷食べ物を残さず食べるということもアニミズムと関係しています。
「いただきます」という言葉は、生命をいただきますという意味です。
「食べ物を残すことはもったいない」「生命をいただいている」という意識はアニミズムの価値観に由来している考えなのではないでしょうか?
身近なアニミズムの良い例があったら、ぜひコメントお願いします!
cf. 食品ロスについて
食べ物を大切にするという価値観は、食品ロスが社会問題の現代においてとても重要です。
毎日一人当たりおにぎり一つ分🍙が捨てられ、国連の報告書によると1年間に一人当たり64kg(*1)が日本で捨てられています。
食べ物に限らず、グローバル化した生産工程ではロス(無駄)が多くなってしまい、生命の源である生命(野菜や動物を含め食べもの)とのつながりが薄れると同時に感謝の気持ちが希薄されたように感じます。
*1参照:FOOD WASTE INDEX REPORT 2021 https://www.jeijc.org/wp-content/uploads/2021/03/unep21-food-waste-index-report-2021.pdf
アニミズム⑥ ジブリはアニミズム満載!
もののけ姫に限らずジブリには、風の谷のナウシカ、となりのトトロ、千と千尋の神隠しのように神秘的でアニミズムの要素が満載の映画が多いよう思います。
アニミズム⑦ もののけ姫とアニミズムの関係
❶アシタカの住んでいた村は岩が御神体
❷シシ神が森の神様として崇められている
❸サン(もののけ姫)たちが暮らしている岩もかつては御神体
❹シシ神殺しに天朝(帝 みかど)の許可が必要だった
神を殺すということは、帝の許可がいるほど重大なことだったことが伺える一面
もののけ姫から学ぶ自然と共生する知恵
タタラ場は鉄を作るためにシシ神の森の木を切り倒し、資源を得ていました。
一方、森の神たちは怒り、文明(人間)と自然の間で対立が起こりました。
文明が発展する過程で、自然が搾取される場面は現代の環境問題、気候変動、野生動物の絶滅加速などに見ることができます。
経済優先で自然環境が犠牲になる現代の社会との共通点が多い、もののけ姫の物語です。
タタラ場は資本主義社会を、シシ神は生命である地球そのものを、アシタカとサンは環境活動家や自然との共生を掲げる人々を描写しているように思いました。
生死を司るシシ神は、地球の自然環境の循環のライフサイクルそのものです。
後半のシーンで、デイタラボッチ(シシ神の夜の姿)が太陽の光に当たり、倒れ死んでしまう場面があります。
デイタラボッチが倒れると同時に強風が吹き去り全てが終わってしまいます。
その後、サン(もののけ姫)は「シシ神様はもういない。」と言いますが
アシタカが「シシ神は死にはしないよ。生命そのものだから。」
という場面がとても印象に残っています。
もののけ姫から自然との共生・共存の大切さはもちろんのこと、自然の偉大さと儚さが感じられます。
”持続可能”という言葉をよく聞くようになりましたよね?
これからの時代自然との共生が大切になります。
きれいな空気、安全な水、健康な土壌が必要です。
私たち人間だけでなく、この地球上に生きる生命全てが必要です。
バイフォリア*1の感性で共生を考えたいです。
*1:直訳すると”生命愛”:種を超えた生物間での愛情のこと
是非もののけ姫を観てみてください🌱